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九州大学病院 先端医工学診療部

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腹部

肥満手術(メタボリック手術)

肥満は病気?

肥満は世界的な「流行」であり、現在世界の成人で14億人とされる肥満人口は年々増加し、今後の20年で世界の成人人口の半数以上が肥満となる可能性があるとも言われています。日本においても、肥満(肥満の指標であるBMIが25kg/u以上の人)の割合は、男性3割、女性2割にのぼります(厚生労働省の「国民健康・栄養調査」2013)。肥満がすべて病気ではありません。しかし、肥満はさらに、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病の誘因となり、いわゆるメタボリックシンドロームを含むさまざまな健康障害を来すことが知られています。日本人の三大死因は、がん、心臓病、脳卒中ですが、そのうち心臓病と脳卒中は、動脈硬化が要因となる病気です。メタボリックシンドロームになると、糖尿病、高血圧症、高脂血症のそれぞれは軽い状態でも、これらが内臓脂肪型肥満をベースに複数重なることによって、動脈硬化を進行させ、ひいては心臓病や脳卒中といった命にかかわる病気を急速に招きます。
肥満には皮下脂肪が多いタイプと内臓脂肪が多いタイプがありますが、日本人には内臓脂肪型肥満が多く、BMIが比較的低くてもメタボリックシンドロームを主とする肥満に関連する健康障害を起こしやすいことが、わかってきました。
このように、ただの肥満ではすまされなくなってしまった状態を“病的肥満”、ここまで来ると体重の減少あるいは生活習慣の改善自体が、めったに成功せず、多くの方が深刻な関連疾病を患うという点で、単純な肥満とは区別される疾病状態です。

病的肥満の治療は

肥満治療の基本は食事療法・運動療法などの内科的治療ですが、BMI≧35kg/uの高度肥満の患者さんでは、長期的にみると多くの患者さんで減量治療が成功しないことが多いのです。海外では肥満に対する外科的治療は、世界で年間40万件を超え積極的に行われています。日本では保険診療として承認されていなかったこともあり年間200件に満たないのが現状でした。しかし、2010年に日本で腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が先進医療として承認され、ついに2014年4月より日本でも保険診療として承認されました。



肥満手術の適応

肥満手術はかつて単純に自己統制の努力を排除する麻酔手術の一つとしてみなされてきました。しかし、多くの研究者の報告によると、糖尿病、高血圧、高脂血症、脂肪肝、胃食道逆流、睡眠時無呼吸症候群、痛風、変形性関節症(膝の痛み)などの様々な関連疾患が劇的に改善または多くの患者において完治しています。更には心血管疾患による死亡率も同手術を通して減少し、肥満手術が単なる麻酔手術ではなく救命手術であることを示しています。代謝疾病に対するこれらの良好な結果を元に、手術が代謝疾病を持ったひどくない肥満患者にも拡大している趨勢です。
一般的に肥満手術を受けた方がよいと考えられるのは以下のような状態の方です。
1. 食事と運動で体重を減らすための努力は成功していない。
2. 体格指数(BMI)が35以上(極度の肥満)である。
3. 2型糖尿病、高血圧や重度の睡眠時無呼吸症候群などの体重に関連した健康問題を、持っている。
具体的には、太ってしまって食べる量は一生懸命減らしているのだけど、動こうと思っても体が重たくて、膝や腰が痛くて動けない、あるいは息切れや動悸がすると言った方だと思います。


肥満手術とは

現在ほとんどの肥満外科手術は患者さんのメリットを考慮して腹腔鏡下に行われています(内視鏡外科手術)。手術の基本的原理は胃の容量を減したり、上部消化管(胃、十二指腸、近位空腸)にバイパスを通したり、この両者を結合するもので、これらの過程は全て腹腔鏡を通して行われ、長い腹部切開を伴う開腹手術ではありません。内視鏡外科手術とは光学技術の進歩により、モニターを通して複数の外科医による画像の共有化が可能となり、1980年代後半に可能となった術式です。この術式によって、病巣へアプローチする際の正常組織への損傷は極めて少なくなり、手術を行う上で不可避な侵襲が、大きく軽減され、内視鏡手術は瞬く間に全ての消化器外科手術に適応されるに至り全世界に広まりました。
肥満手術が普及したのは、この内視鏡外科の技術や器具が進歩した事によります。腹壁が厚く、内臓脂肪も多い病的肥満の方には、これまでの開腹手術では、傷が極めて大きくする必要があり、しかも大きく開けてしまうと閉じるのも大変です。合併症も多く発生するため、肥満手術は開腹では出来なかった手術と言っても過言ではなく、内視鏡外科でしか普及しなかった治療方法です。

2014年4月から、日本で保険適応となった肥満手術は、シェーマのように、胃の外側2/3を切り取って、細く長い胃にする方法です。胃の外側の部分からは食欲を増進させ、太るように導くホルモンが出ているのでこの部分を切り取ってしまうのが目的の手術です。

肥満手術の効果

肥満手術の目的は、食べれなくする事ではありません。食べても太らなくする事でもありません。あまり食べたくなくなる、食べても直ぐおなかが一杯になるようにする事です。特に今まで好みだった、脂っこい食べ物が、食べたいと思わなくなるようにする事です。その結果、多くの研究者の報告によると、糖尿病、高血圧、高脂血症、脂肪肝、胃食道逆流、睡眠時無呼吸症候群、痛風、変形性関節症(膝の痛み)などの様々な関連疾患が劇的に改善または多くの患者において完治しています。
更には心血管疾患による死亡率も同手術を通して減少し、肥満手術が単なる減量手術ではなく救命手術であることを示しています。代謝疾病に対するこれらの良好な結果を元に、手術が代謝疾病を持った、ひどくない肥満患者にも拡大している趨勢です。
肥満手術が安易な魔法の杖ではなく患者の長い間の苦悩への最大の支援策であることを強調したいと思います。
多くの医師と患者は、肥満治療が治療の総額を減らし、生命を脅かす関連疾病を治療し、一般的に疎外される病的肥満患者に新しい社会生活を提供するのに最も効果的な手段であると考えるようになっています。
つまり、肥満手術は、あなたの人生を変える事が出来る手段なのです。


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